福島県田村市から春蚕期の生繭を出荷
JAたむらとの連携事業で初めての出荷
2014年6月30日津和野町発、株式会社にちはら総合研究所(島根県・津和野町)は福島県田村市を管轄するJAたむらから6農家、730kgの生繭を調達しました。福島原発事故の影響による風評被害から価格低迷を問題視していたJAたむらの窮状を受け、2013年夏から1年近い調整期間を経て、諸条件がまとまり、今回の荷受となりました。
風評被害に悩まされているとはいえ、「そもそも原発事故当初より田村市(船引地区)の繭からは放射能は無かったという、また、放射能を危惧する割に、これまでの取引においては誰も追加の放射線検査もかけていない。これは風評ではなく偏見被害でしかない(にちはら総合研究所・佐伯潤代表取締役)」として、にちはら総合研究所は経済産業省の支援事業を推進する一般社団法人材料科学技術振興財団の福島分室に協力を依頼、農家単位の放射線が検出されないことを証明するための検査を無償で受けることで、安全性を担保しています。
高い養蚕技術の残る福島
「何より驚くべきことは、田村市の養蚕農家の技術の高さだ。今年2月に田村市内の養蚕農家の桑園を見学したときに、整備が行き届いた美しい桑園にも感嘆したが、この粒のそろい方、大きさ、内部の蚕蛹の健康状態、各農家がこれだけの品質の生繭を揃って収穫するとは、ただただ驚くばかり(佐伯潤代表取締役)」と、春蚕期に収穫された生繭は高い品質を実現しています。
福島県田村市で収穫された生繭は、その全量について、蚕蛹は冬虫夏草培養用として用いられ、切繭は群馬県桐生市の業者を通じて医療品原料に、内部の脱皮殻(蚕退衣)は全量が漢方薬局に、と、一切廃棄されることなく、既に販売先が決定しています。
にちはら総合研究所が考える養蚕業の形
にちはら総合研究所では、切繭の用途について真綿原料、絹紡糸(真綿から作られる絹糸)、衣料品原料など、様々な用途を連携企業と開拓しており、より高付加価値で、廃棄要素の非常に少ない生繭の活用を実現しつつあります。
「そうした養蚕業の発展のためには、需要者と養蚕農家の密接な関係性と、そこに生まれる情報交換が重要であり、事業の活性化に効果をもたらすことが確認された(佐伯潤代表取締役)」とあるように、今回の収穫においては、にちはら総合研究所と津和野養蚕・冬虫夏草連絡会(会長:津和野町長)が共同して、田村市の養蚕農家へのにちはら総合研究所が求める良質な繭のための蚕病対策講習会を開催したり、JAたむらが必要となる薬剤を各農家へ配布したり、と、事前の十全な準備が成果につながったと言えます。
JAたむらの担当職員も、来年の養蚕部会総会で、これまでは下降ばかり続いていた売上高が上昇に転じたことが報告できるのが楽しみ、と、今後のJAたむらとにちはら総合研究所との連携に期待を寄せています。
福島県田村市からの生繭の荷受は夏蚕期と晩秋蚕期の2回が予定されており、年間通算で2.2t程度の取引となる見込みです。