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小石丸の全齢人工飼料育が6次産業モデル事業へ

[ ] 2014年05月27日
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平成26年度島根型6次産業ステップアップモデル事業の採択決定

2014年5月27日津和野町発、株式会社にちはら総合研究所(島根県・津和野町)が津和野町らと申請をした、平成26年度島根型6次産業ステップアップモデル事業(通称:しまろく事業)の採択がなされました。

採択を受けた事業は「「小石丸虫草」生産に係る全齢人工飼料育整備事業」で、日本の固有蚕品種である小石丸を全齢人工飼料育で養蚕するというもの。小石丸は紅葉山御養蚕所で皇后陛下が御養蚕なさっている蚕品種として知られていますが、桑葉を用いなければ養蚕ができないとされていました。当該事業のメンバーでもある津和野町(津和野養蚕・冬虫夏草連絡会)の特別技術指導員である、京都工芸繊維大学の一田昌利准教授が、小石丸に改良を加え人工飼料でも養蚕ができるようにしたものを大量飼育するのが事業の目的です。

小石丸に与える人工飼料も独自に開発されたものを使用し、微量ではあるものの人工飼料に添加される抗生物質や防腐剤については、ヒト用に認可された食品添加物のみを使用することで、安心安全の度合を高めた点に特徴があります。

知的障がい者が参加できる6次産業事業

本事業に用いられる小石丸とその人工飼料は一般流通していない点であるところが、事業化の高いハードルとして顕在化していました。それを、本事業のネットワークの一員である、社会福祉法人山城福祉会・志津川福祉の園(京都府・宇治市)が長年養蚕に携わってきた経緯から、蚕種(蚕の卵)製造ならびに人工飼料の調製を請け負うことで問題解決の端緒としています。

志津川福祉の園は就労継続支援B型事業に係る授産施設で、ダウン症や自閉症の利用者の方々が養蚕に携わっています。「できるから、する仕事、ではなく、やりがいや喜び、関心をもって従事できる仕事として知的障がい者の方々に就業していただける仕事として本事業を発展させていく」(佐伯潤東京支社長)ことが本事業の目的の一つとなっています。

作業空間のクラスター化、可搬性による多地域連携を模索

全齢人工飼料育にあたっては雑菌対策などが重要なテーマとなります。本事業に参画する、プレハブユニット製造大手の三協フロンテア株式会社(千葉県・柏市)との技術提携により、可搬性のある小規模養蚕施設の開発を進めています。

施設を小規模化、クラスター化していくことにより、雑菌による蚕の大量死といったパンデミックリスクを低減させ、また、生産規模拡大への柔軟な対応を可能にしています。また、プレハブユニットの可搬性を最大限に活かし、事業の拡大に合わせて他の知的障がい者施設との連携をはじめとする、津和野町から発信される6次産業による多地域連携の模索にも期待が寄せられます。

津和野発の冬虫夏草に新たなラインナップ

小石丸を宿主として培養した冬虫夏草は、一般の養蚕に用いられる蚕品種から得られた冬虫夏草よりも癌細胞増殖抑制効果やリンパ細胞免疫賦活効果などにおいて高い効果を示すことは既に津和野町、岩手大学と、にちはら総合研究所の共同研究により明らかになっており、今後は現状の津和野式冬虫夏草の上位品種としての上市が期待されます。

  • 小石丸の蚕種を確認する、一田昌利特別技術指導員(京都工芸繊維大学准教授)